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花火

俺が、宮谷一彦という天才的画力をもったマンガ家を知ったのは、BSマンガ夜話が彼を取り上げた時である。伊達に人生の半分以上を岡田斗司夫的オタク作品消費にささげてたわけではない俺ですら、彼を知らなかった。彼の作品を読んだこともなかった。積極的に写真的な絵をマンガに取り入れたのは宮谷一彦が初めてであり、またその際にスクリーントーンを重ねる、削る、荒い網点を使うなどの、現代マンガでは当たり前となった技術を開発したのも宮谷であると紹介されていた。これほどの重要人物を、人生の半分はオタクやってる上にまだまだ現在進行形で、しかもちょっとは商業仕事もしたような人間が知らないのである。マンガの描き方的ハウツー本なら、10代の頃いっぱい手にしているのに。

まあ俺が無知なのだと言ってしまえばそれまでだが、そうすると話が終了なのでそれはあっちへ置いといてくれ。で、これほどのエポックメーカーなのに何故それまでの人生で全然触れてこなかったのか。一言で言えば、彼とは生きていた時代が全然違うからであろう。俺が生まれて初めてマンガという表現ブツを手にするころには、彼はもう商業連載をやっていなかった。だから、歴史をさかのぼって「教養」として知るしか手段は残されていなかった。そうなると、子供には普通は親が読んでいて残っているマンガとか、手塚治虫くらいしか手にできないのだ。俺が神保町の古本屋などで読子・リードマン的強引な書籍入手方法を駆使できるようになったのはせいぜい 90 年代に入ってからだし、その際も運悪く宮谷を知ることはできなかった。

かように、マンガという表現はとてつもなく共時的な、つまり作家と同時代に生き、作家と同時代の空気を共有していないと、一瞬にして消えてしまうはかないものだ。作家が命を削って描いた作品も、5年もすれば致命的に古くなり、10年もすればみんな忘れてしまう(ウェブの萌え絵なんてもっとサイクルが短い)。運がよければファンが作家と一緒に歳を取って作家を支えてくれるが、商業連載などの発表の場を持ち続けてないとそれもなかなか難しい。マンガ(とか俺がやってるようなこと)というのはどれもこれも花火みたいな一瞬のもんで、しかもその 99% くらいは地味でちっぽけな線香花火である。もちろん、それらは全て美しく見る者を楽しませる。でも、大きな打ち上げ花火をぶっ放せるのは極々一部だし、大玉を打ち上げたマンガ家でも人生明るいとは限らない。アニメ化されるほどの人気作家であった吾妻ひでおですら、仕事がなくなって肉体労働をしていた時期があるという。

一応、マンガ系の出版業界はそういう構造を理解しているから、同人とかウェブで過去の絶版作品を作者が無料配布したりしても、あまり文句は言わない。絶版マンガや単行本未収録作品を同人で出すのって、よくあるよねー。こういうのを出版社が見逃したり認めたりしてくれるのは、この業界が比較的良心的だからというよりは、「どうせ商業ラインで出してもそれほど金にはならないからどうでもいいやー」という「なあなあ主義」だからだとは思うけど、音楽業界なんかに照らし合わせれば、そういう手段を認めてくれてるってだけで十分にたいしたことだ。

だからさー、著作権著作権と金切り声を上げてる音楽業界とか映画業界とか一部のゲーム業界の人達もさー、せいぜいそれくらいには考えを軟化させたらどうなのよ。どうせ、資本主義社会の商業芸術作品なんて一瞬しか輝かない花火なんだから。でもみんな命削って花火作ってるんだからな。俺らはもっと花火が見たいんだよ。昔の花火も見たいんだよ。どうするのが長期的な利益になるかという視点を持てないくらい馬鹿な人ばかりではあるまいに。緩慢な自殺を試みているなら止めてやらねばなるまい。

さて、そんなことを考えながら渦中のダウンロード板なんかを見てみると、「これは京都府警との戦争である!! 47氏の遺志を継ぎ俺は ny を続ける!! ジークダウソ!!」なんていう、今は学生闘争の只中ですか火炎瓶投げますか的雰囲気が少なからずあって、警察は萎縮を狙ったのだろうが、なんだか逆効果著しい人もいるようだ。

(47)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:32

著作権法は何を守っているのだろう

特許法第一条には

「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与すること」

とある。これは、産業を発展させることがその目的であり、その手段として発明を保護すると読める(現在の特許法が本当に産業の発展に役立っているかどうかは大いに異論のあるところだとは思うが)。一方著作権法第一条には

「著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与すること」

とある。まず権利を定義し権利の保護を図ることで文化を発展しようという。これは、権利を保護することが法の目的であり、その結果として文化が発展するのだというように読める。つまり、根本的に法のスタンスが違うようである。それは、特許法には「発明を奨励」するとあるのに、著作権法には、表現活動を奨励するとは記述されていないところからもうかがえる。この違いはなんだろうか。

産業の発展は、国にとって絶対に必要である。産業がなければ国民は飯が食えないから、確実に国が破綻する。だから、産業を育成し保護するのは国として当たり前なのだ。では文化はどうだろう。文化は生存に必須ではない。日本国民は憲法で「文化的な生活」が保障されているが、何をどうすれば「文化的」なのかについては定義されていないから、「文化的」というのは大いに幅のある概念だろう。

だから、現在の著作権法が、産業として成立している流通業ばかり保護しているように見えても、国の立場としては決して不自然なことではない。そもそも、文化という得体の知れない上に生活に必要ではないモノを云々するには、全員が余裕で飯を食えるくらいの豊かさが前提となる。現代のイット革命な日本で著作権問題が派手に取り上げられる背景は、誰一人として餓えることのない豊かさと、実質識字率 100% という、国民の情報の受信と発信が可能になりうるための最低限の教育が達成されているからに他ならない。

逆から考えれば、そういった最低限の土台が整ったところで、ようやく憲法でうたわれている「文化的」とは何かを議論することができるようになったと言える。高度経済成長前にこんなことは議論できなかっただろう。著作権法は何を保護するべきなのか。産業なのか。それとも何か他のモノなのか。それとも、いっそ保護しないエリアを決めるべきなのか。それほど遠くないところから象徴的な逮捕者が出た今日、考えずにはいられない。

Winny が違法に使われることを承知で作られているのは紛れも無い事実だと私も思うが、立証は困難だろうから言い逃れできる道の方が太めなような気もする。でももし起訴されたら有罪にはなるだろう。それに開発者自身が、「今の社会システムに巨大な一石を投じて討ち死にするもまたよし」くらいの覚悟を決めているフシがある。もしかしたら警察は報復逮捕とか見せしめ逮捕みたいな低いレベルの動機で動いているかもしれないが。

でも一石を投じたまま終わられても困る。何とか著作権法を「文化育成」の方向へ向けねばならん。せめて、第一条に育成とか発展の一言くらい入れてくれ。そのために、「ある程度枠組みを作って後は放置」という姿勢を許容できるくらいには、国にもオトナになってもらわねばならん。文化大国になりたいなら、有象無象を有象無象のまま認める度量を持ってもらわねばならん。国が、というのはつまり、国民がということだ。

(45)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:33

バレにくい嘘

以前、確か日本経済新聞社系のニュース番組だったと思うが、「30% から 50% 低い」と語っていた英語のインタビューを、「30% から 50%程度である」と訳していた字幕があって、クラクラきたことがあった。前者は 60% くらいの数字を想像するし、後者は 40% くらいの数字を想像するのが普通だろう。分かっててやっているとしか思えない。好意的に解釈すれば文意を強調するためなんだろうけど、報道としてはどうだろう。

そういえば、捕虜イラク人にアメリカ軍が行った "torture" と報道される行為を「虐待」としたのは、斬新な意訳だと思う。予備校とかの受験英語の授業ならバツが付くんじゃなかろうか。意訳というのは、もしかしたら 図的な誤 という意味なのかもしれない。

(45)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 23:08:40

つながってる?

日本は、文字の読み書きが出来ない(つまり文字通りリテラシのない)人がほぼゼロという、とんでもない国である。こういう国では、行政や社会サービスにおいて文字の読み書きができない人を取り扱う必要がないから、そういう人たちを表現する社会的に問題のなさげな言葉(つまり「文盲」以外の穏当な表現)が一般化してなかったり、役所をはじめとする社会システムも、そういう人の存在を考慮しないのが当たり前になっている。これを少しアカデミックに言えば、差異がなく均質化している分野や、分ける必要が無い分野においては、分けるべき言葉そのものが存在しない、ということになる。

これは、逆の方向から言うとそのまんまソシュールになる。虹は無段階に変化する色相のグラデーションだが、日本語だと赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の 7 色に分割し、英語だと藍色が抜けて 6 色とする。なんでそうなるのかというと、日本語には藍色という青と紫の間をさらに細かく分割する概念があったから、てな感じである。もし藍色という分類を知らなければ、青か紫のどちらかに押し込んでしまうだろう。

さて。現在の日本というのは、IP reachable も当たり前になってるわけで、IP のネットワークに接続することはなんら特殊な属性ではない。そういう状況で、ネットワークに接続する人としてない人とを分け隔てる言葉、例えば「ネットワーカー」や「ネチズン」といった言葉は必要だろうか。もちろん全く必要ない。当たり前の属性な上に、対立項はどんどん消滅していってるのだから。『CGネットワーカー自薦集』などという今から思えばややイタいタイトルの本に名を載せたこともある私なわけだが、「ネットワーカー」という言葉は現在では完全に死んでいる。

3月頃にアジア各国の大学関係者による情報環境普及についての発表があって半分眠りながらぐんにょり聞いていたら、韓国の発表者が積極的に「ネチズン」という言葉を繰り返し、自国に IP ネットワークが普及していることをがんがってアピールしていたのだが、これはもちろん「IT 国家をアピールする手法」としては間違ったアプローチであり、失敗である。本当に普及していたら「ネチズン」という恥ずかしい言葉は消滅しているからだ。

(42)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:35

脱イタタを目指して

情報処理周辺に関するマスコミの報道は、不適切な用語の使用や稚拙な背景知識など、かなり非道いデキのものが多い。例えば、asahi.comの 4月8日の記事には「他人のホームページに侵入」といった素敵に頭の悪そうな表現がある。わずか 3 文節のフレーズなのにもうツッコミどころ満載である。他にも、「ウイルス」や「HP」や「基本ソフト」などのイタい表現は尽きないし、横書きが標準のウェブ用記事でさえ、「マイクロソフト・ウインドウズ」や「グーグル」や「ホットメール」など固有名詞を必ずカタカナに書き下すもんだから、読んでて背中がむずがゆい。

で、マスコミの情報リテラシが低いと批判したり、所詮マスコミなんてダメなんだとペシミスティックになるのも簡単なのだが、そんなことはやり尽くされてるから、いまさらどうでもいい。ちょっと冷静に考えるべきなのは、マスコミの報道というものは、どのジャンルにおいても、この程度の浅い理解とイタイタしい言葉の使い方しかしてないのではないかという点である。

私が一応プロだと言える範囲は、大まかに言ってヲタと情報処理なジャンルであって、ここら辺にはまあそれなりの知識と技術を持っている。となると、そういった事象を扱う記述については、マスコミの不正確さに気づくことができるし、より正確な表現にして欲しいとも思う。だが多くの専門外の人にとって、緻密すぎるターミノロジは、全体像を理解する上で妨げにしかならない。だから、多数の人間を相手にせざるを得ないマスメディアがある程度粗い説明になるのは、仕方のないことである。

となるとである。新聞やテレビで伝えられる、政治やら経済やらについてのニュースも、その道の専門家から見た場合は、多分かなりイタイタしい文章に仕上がっているのではないか、という推論が成りたちそうである。まあつまり、マスコミに載ってる内容って、そのジャンルのプロからみたら全部イタいんだろうね多分。もちろん、そういった記事を引っ張って騒いでるだけの素人の会話は、もっとイタいことになっているのだろう。所詮、素人が素人向けに書いたものを素人が読んで分かった気になっているのだから。

じゃあ、そういった素人のイタい活動は無意味なのかというと、もちろんそんなことはない。専門家は、素人の輪の中から生まれてくるのだから。それに、全員が全てのジャンルの専門家になるなんてことはムリなんだから。で、もしよく分からないことがあったのなら、素人は専門家の助言や解説を利用してその現象を読み解いて、多少なりともイタくない理解へ近づいていけばいい。まあだから、一応マスコミは可能な限りそうできるための道を用意しようとしている。専門家呼んで解説させたりしてるよね。

ただ、その専門家を選定しているのが超素人の視点だったりして、イタい解説をするイタい専門家を呼んでしまうことが少なくないなんて点が悩ましいわけで。つまり、リテラシを高めるというのは、学ぶべき人物を鑑定する嗅覚を高めるということなのかもねぇ。

(45)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:36

偽西遊記風味幼女

偽西遊記風味幼女

偽モノ西遊記風味。ほんとはこれを2004年の年賀状にしたかったものの、1 月には悟空しか間に合わず、全部描き上げたのが 4 月というのはいかがなものかと小一時間。

未完成版

下描きでは龍もいたのですが、画面に入らなくなってご退場されました。

(58)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2010-05-22 03:09:24

がんばれ手荷物検査官

飛行機に乗りこむ前には、手荷物を検査されたり金属探知機で体を調べたりされるわけだが、その金属探知機に必ずひっかかる人というのがいるらしい。高校の担任が、自分はそういう人種だと主張していた記憶がある。別に、自分が金属を身につけていたという事実をずんどこ失念して平然と金属探知機に挑んでしまうような健忘症というわけでもなく、どうも身長の問題らしいとその長身の先生は自らの推測を披露していた。真偽の程は不明だ。ベルトのバックルや腕時計が平均的な位置より高いと、金属探知機は過敏に反応するらしく、手荷物検査のたびに身に付けているものを次々外していくことになるというようなことを言っていた。

さて、一応平均的な身長と体重を維持しているし、ナイフや火薬なんて扱う機会すらない俺には、手荷物検査で引っかかるなんて無縁な話だと思っていたのだが、先日見事に引き止められた。X線検査後に荷物を受け取ろうとすると、「ナイフのようなものを持っていますね?」とポーカーフェイスの検査官に問い詰められる。彼女にとっては多分ルーチンの質問だから別に他意はないんだろうけど、何十回と飛行機に乗ってきても機内持込の手荷物で呼び止められたことなんかない俺には、おっそろしい尋問に思える。ちなみに現在時刻は21時過ぎ、最終便が出るギリギリの時間である。あまり時間がない。

「え。持ってないと思いますけど……」と弱々しく答えたものの、「X線に刃が写ってますから」と毅然とおっしゃる。「カッターナイフのようなものが、下のほうに入ってます」。さらに、容赦なく「カバン開けてください」。まったく、俺がいかに雑然とかばんにモノ詰め込んでるかを知らないから、そんな毅然と「開けてください」なんて言えるんだぞ。今、俺がその雑然ぶりを分からせてやる。

で、恥ずかしいことに女性の担当官の前でカバンを開けて、使用済み下着(もちろん使用者は俺)とかをかきわけかきわけカッターナイフを探すことになったわけだが、これって性別が逆で国がアメリカだったら損害賠償モンだぞゴルァ。という屈辱的な 10 分ほどの時間をすごした後、持ち主がその存在すら忘れていたカバンの内ポケットから、カッターナイフが出てきた。めでたく取り上げられ、「私はカッターナイフみたいな危険物を機内に持ちこもうとした悪い子です。ごめんなさい」という文章に署名して(注:この表現は誇張しすぎです)、「お客様が最後ですのでお急ぎください」とせかす航空会社の人と一緒に走りながら、飛行機に間に合わせたわけです。F空港の手荷物検査官、本人もその存在を忘れていたカッターナイフと再開させてくれてありがとう。すぐ永久の別れになったけど。

まあ、ここまでならよくある話なんですよ。あんまよくない話なのは、俺、この内ポケットにカッターナイフ入れたままのカバンで、最低でも 3 回は飛行機に乗っているってところです。ええ、もちろん手荷物検査はオール O.K. でした。しかもそのうち1回はこの空港から乗ったよ!! がんばれ日本の手荷物検査官!!

(46)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:37

はなし塚に続くもの

はなし塚という石碑が浅草の本法寺にある。東京新聞の記事から引いてみる。

戦時中、「廓大学」「明烏」「つづら間男」など五十三演目が世情に合わない「禁演落語」とみなされ納められた。戦後、落語家の手で封印が解かれたが、現在もその塚がそのまま残されている。

要するに、戦時に合わない「『不謹慎』なお話(ネタ)のお墓」だ。高座で演じられなくなったので、落語家がネタの弔いをしたわけだ。こう書かれると、『はだしのゲン』とか読んでる世代は、特高警察による激しい弾圧があったのか!? などと思いがちだが、それは誤解である。孫引きになるが小林信彦のコラムを引いてみる。

落語家たちが艶笑落語をやりません、などと誓いを立てたのは、文字通りのお笑いぐさであった。<中略>べつに弾圧ではなく、落語界が自粛したのである。

その他にも同様の指摘をしている資料は幾つかウェブ上にあるが、なんと、驚いたことに、飯のタネである落語のネタを、落語家自らが封じようと動いたのだ。そして、高座は時流におもねる漫談のような兵隊ネタ軍隊ネタで満ちたという。

実はこのエピソードは以前 NHK で流された古今亭志ん朝師匠の再現ドラマで知ったのだが、こいつはとても示唆に富んでいると思う。思想や表現や創作の自由の制限は、法的には何の拘束力もない、自粛から始まるのだ。

皆が自粛すれば、「そういった表現を行わない」ことは“常識”としてその業界に定着する。卑近な例だが、エロゲーで18歳未満の性行為を出さないとかね。18歳未満のキャラクターに性行為させる表現物の創作・頒布は、完全に合法であるにも関わらず、業界団体の自粛の一言によって葬られる。近親相姦ネタとかもな。そして、いっそう自粛が進み、その規制が完全な“常識”、すなわちタブーと化したら、堂々とその表現を規制する法律を作ればいい。そうすれば、そういった“常識”に則ってる規制の制定に反対するような奴は、非常識であり反体制であるといった認識がコモンとなるのは間違いない。その時はもうすでに、反対派が社会的な支持を集めることは難しい。タブーに理性は通じないんだ。

だから、あるジャンルにおけるコンテンツ規制で騒ぐなら、自粛が始まった時点で力いっぱい騒ぐべきなんだ。2002 年 4 月、うるし原智志氏が、コミックスでの未成年の性描写とその暗示について、「残念です」とおっしゃりつつ自粛に応じていた。当時は、この俺ですら K 川の編集に釘をさされたことがあり、それと合わせて俺はスゲェショックを受けてスンゲェ長いアジ文を書いたのだが、あまりに攻撃的だったので公開しなかった。うるし原先生が自粛に応じられたのは、仕方のないことだ。作家は、編集や流通の自粛には絶対に逆らえない。作家がプライオリティを持ってるなどと思うのは大きな間違いだ。そんなのは鳥山 明クラスの大作家センセイであって、多くの作家は、大企業様からお仕事を分けていただく中小企業の社長に過ぎない。同人誌なら大丈夫と思ってる人、印刷所が自粛したら本は1冊も刷れない。即売会が自粛したら全て販売停止だ。ネットなら大丈夫だと思ってる人、プロバイダやサーバ屋に自粛されたら、何も公開できない。違法じゃないコンテンツだって、自粛で遮断できるんだ。

自粛の後に続くものについて、思いを馳せねばならない。コンテンツを作ったり消費するのが大好きなら。

(44)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:38

許されざる者

日本人には、一人もバカはいない。いや、いてはならない。バカでいることは憲法違反だからだ。

国民主権とは、国のまつりごとを全国民が行うということである。まつりごとを行うには、計画をたてたり、情報を収集・分析たり、意思決定したり、行動したり、結果を観察したり、欠点を反省したり、やらねばならぬことは山のようにある。日本国民全員は、少なくともこれらをこなせるくらいには優秀でなければならない。だから、バカでいることは罪なのだ。

まあ、もちろんこれは冗談だし、そもそも憲法とは国の姿勢を規定するもので個人が犯しうる法ではないわけだが、代表制民主主義という制度を敷いている以上、国民は、自分を代弁する為政者を「理性的に」選ぶだけの能力は持っていなければならない。だから教育は国民の三大義務だし、やっぱりバカでいることは憲法違反であって、「バカでいる自由」などというものは、ないのだ。

もし国が衆愚的な政治制度を敷こうとした場合、日本国民は理性的に判断しそれを止め、あるいは改定しなければならない。というか、そうするだけの理性があることを前提に、民主主義国家の憲法は作られている。なのに、もっとも民主的な国であるはずのアメリカ合衆国の様を見てると鬱になるのは、なんでだろう。

(43)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:39

seek me - 私を探して

なぜGoogleではなく、Yahoo! JAPANか?という記事をハケーンし、触発されて自前のでも調べてみることにしました。リンク先の Perl スクリプトは、日本語の処理や複数キーワードの処理がちょっと不満だったので、さらっと PHP で集計スクリプトを書いてみたものの、遅い。ものすげぇ遅い。こりゃ C で書かなきゃだめか? とか一瞬血迷ったが、PHP や Perl みたいな糞遅いプログラムの中でカウントしたりソートしたりするのがイクナイ。

zcat ログファイル | キーワード抽出 > ファイル
sort ファイル > ファイル
集計 > ファイル
sort > ファイル

つまりはこんな風にシェルスクリプト中心にやればいいのだ。grep とか sort ってほんっとに速いなぁ。GNU ツールとシェルスクリプトのポータビリティすばらしや。

ついでなので、MSN と excite と goo.ne.jp も対象にした。イメージ検索をサポートしているサーチエンジンについては、それも対象にしてみた。googleは、補足しうるかぎりの全ドメイン、Yahoo!は、.jp と .com 、その他は .jp のみである。Yahoo! ディレクトリからのアクセスは対象外としている。いわゆる全角の英数字は半角に変換し、半角のカナは全角に変換してマージしている。google で無視されそうな記号も削ってみた。複数のキーワードは、分解して別々のキーワードとしている。また、ログの前後の行の文字列の類似度を見積もって、リロードなどによる重複と思われるものも可能な限り排除してみた。結果は以下のとおり。

google
検索語件数
1.photoshop4,153
2.着せ替え1,091
3.rgb1,067
4.cg988
5.ガンマ947
6.背景943
7.ガンマ値905
8.グレースケール861
9.輝度826
10.透明717
11.18禁698
12.osakana623
合計52,595
平均8.58
yahoo
検索語件数
1.photoshop5,164
2.着せ替え2,308
3.ロリコン1,587
4.ロリータ1,174
5.イラスト講座1,143
6.講座694
7.イラスト676
8.背景573
9.ガンマ値454
10.描き方447
11.shop423
12.水面422
合計35,921
平均10.78
msn
検索語件数
1.着せ替えゲーム4,821
2.着せ替え1,688
3.ロリcg788
4.ロリ433
5.cg334
6.photoshop275
7.ゲーム237
8.大暮維人152
9.グレースケール142
10.オーバーオール139
11.lolita137
12.ガンマ値104
合計12,522
平均17.71
goo
検索語件数
1.着せ替えゲーム714
2.着せ替え506
3.photoshop151
4.osakana.factory84
5.ロリcg78
6.ロリ64
7.ゲーム52
8.ガンマ値48
9.ガンマ45
10.cg45
11.背景43
12.グレースケール39
合計3,231
平均6.69
excite
検索語件数
1.着せ替え238
2.photoshop50
3.ガンマ29
4.水面21
5.オーバーオール21
6.ペン入れ17
7.水面の描き方14
8.グレースケール14
9.cg13
10.描き方12
11.女の子の着せ替え11
12.初心者運転10
合計948
平均2.84
全体
検索語件数
1.photoshop9,793
2.着せ替え5,831
3.着せ替えゲーム5,535
4.cg1,790
5.背景1,626
6.ロリコン1,587
7.ガンマ値1,517
8.ガンマ1,483
9.グレースケール1,457
10.rgb1,401
11.透明1,229
12.輝度1,200
合計105,252
平均13.15
メタデータ
リクエスト総数20,933,143
統計期間600日
採取できた外部HTTP_REFERER909,039
そのうち上記検索エンジン経由105,252
外部REFERERに対する割合11.58%
全体に対する割合0.50%

MSN が意外に多くてびっくりした。さすが MS の次期コアブランド、順調に洗脳が進んでいるようだ。goo や excite は全然勝負になってない。このサイトに直接関係無い唯一の固有名詞が MSN の「大暮維人」というのはちょっと面白い。全サーチエンジンで上位なのが、「着せ替え」だったというのもちょっと驚き。着せ替えはそんなに求められていたのか。

率直な印象は、「サーチエンジンからくる人ってあんまいないんだなぁ」って感じだなぁ。想像よりずっと少ない。これはつまり来てくれる人が固定化してるってことなのだろうか。アンテナサイトやロボットが発達するとこうなるのかなぁ。時間軸で切ってみるべきだったかもしれないが、十分なサンプル取れないかもしれないなぁ。HTTP_REFERER の採取率は年々下がっているし。あとせっかく載せてもらってる Yahoo! Directory を集計から外したのはもったいなかったかなぁ。

うーん他にはどう読めばいいのかなこのデータ。例えば、それぞれのサーチエンジンの合計に占める 1 位の検索語の割合。Google がダントツに低い。これはつまり、検索語件数の偏差が小さいってことだ。ということは、Google を使う人は、それぞれバラバラの検索語を叩き込んでるってことで、Google から来る人は何かを探そうという明確な目的意識をもっているという印象を裏付ける傍証になってる……のかぁ?

より使えそうな統計として、あるキーワードで訪問してきた人がどの程度滞在したかを調べるというのがあるだろう。多分、非一般的な用語の方がサイト滞在時間が長引く傾向があるだろうなぁ。

(43)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:40
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