全文検索(S)

同人作家も誤解する二次創作の「合法性」

後輩にあたると思われる人のサイトをたまたま見たら、「二次創作イラストは、著作権法を厳密に解釈すれば権利の侵害にあたる」という記述があった。俺はこの言い方がものすごく気になった。そして、権利の侵害に当たるはずのものがなぜ黙認されているのかという理由として挙げられているものも、すごく気になった。しかも、ほとんどの人がこれらを前提だと思っているらしい。

同人活動が黙認されるのは、一次創作の宣伝になっているからでも、プロが生まれる土壌だからでもない。それらは副次的な理由だ。そもそも、「二次創作が権利の侵害にあたる」というところからして間違っている。「著作権法を厳密に解釈しても、いわゆる版権イラストが著作権法の侵害に当たるかどうかは、一概には決められない」からである。

例えば、ドラえもんのジャイアンを美少女化したような絵をウェブ上に載せた場合、著作権法に違反するといえるのか? こういうのはなんとも判断が難しい。物語の設定や名前やキャラクターの性格付けなどは「アイディア」であって、「アイディア」に著作権は無い。保護されるのは表現だけだ。アイディアをパクることは、作家として非難されることではあるかもしれないが、パロディはそれを意図的にやるわけだし、出来上がる表現としては劇的に異なってくるので、果たして最終的に司法がどう判断するかは、裁判をしてみなければわからない。もし裁判で一定の結論が出たとしても、学者達の見解は割れるだろう。

第一、「二次創作」といったときに何を連想するかは、人によってかなり違いがある。元ネタをそのまんまコピーしてつなぎ合わせたものだと考えるかもしれないし、元ネタで使われた「アイディア」や「設定」を膨らませて作られた別の物語だと考えるかもしれない。前者はいわゆるMAD、英語圏で言うところのAMVであり、後者は大塚英志が『物語消費論』で論じた同人作品の形だ。 『キャプテン翼』の翼君と岬君の淡い恋愛関係を描いたりというのは、(今となっては陳腐過ぎるが、そうした表現がほとんど存在しなかった時代を考えれば)名前や設定を借りて原作とは異なる新しい耽美的な物語を作り上げたものだとも評価できる。それらは、本来の著作権法が考慮していた「二次的著作物」、つまり、翻訳や、編曲、小説の映画化などとは、チト異なるものだ。

元のマンガやアニメの絵という表現をそのまま模写したり、そのままつなぎ合わせたりした場合、著作権法に違反する可能性はやや高くなるが、これもケースバイケースで、元の絵が「二次創作」の着想の参考になっただけで、「二次創作」されたマンガやイラストに新しい独創性が盛り込まれていれば、翻案にすら当たらない場合もあるかもしれない。やっぱり裁判をしてみなければ分からない。そしてそういった裁判は、一次著作者が訴えを起こさなければ始まらない。さらに、何が著作権法違反として訴えられる可能性があるのかというのは、突き詰めてしまえば排他的独占権を持つ一次著作者の主観に拠るといえる(ここら辺のせいで、「心意気」とかの誤解が入りやすくなる)。

「二次創作」って一口に言われるものの範囲は広く、それ故、違法かどうかってのは一口には言えないのだ。

さらにいえば、一次創作と二次創作という分類も、ボーダーのはっきりしない、あやふやなものだ。例えば、ウルトラマンがその着想を手塚治虫から得ていたとしたって、「ウルトラマンは二次創作だ」とか「パクった」とか叫ぶ人はいないだろう。

また、宮崎 駿がルパンやラピュタでフライシャーのメカを真似たからといって、「宮崎駿はパクリ人間だ」などと叫ぶ人もいないだろう。

こういう話になるとすぐ「作品Aと作品Bは似ている/似ていない」の議論になるが、そういう議論をし出したら、もういっそほとんどの萌えキャラは似ているともいえるし、ほとんどのジャンプマンガは似ているともいえるのだ。俺の親の世代なんかだと、美少女キャラクターの区別なんて全然付かない人が大勢いる。一次創作と二次創作に客観的で明快なボーダーを引こうというのも、実は結構難しいわけだ。

二次創作が黙認される理由は、一次創作者の「心意気」や、二次創作者の「リスペクト」が問題なんじゃない。どうしてそっちへ行くんだろう。その考え方はやや危険だ。何でも「クリエイターの心意気」に落としちゃいけない。黙認される最大の理由は、はっきり言えば著作権法が曖昧だからだ。もっと言えば、人間の創作活動というものが、一次創作と二次創作とへ常に簡単に分けられるものでもないからだ。

二次創作が「違法」なのかどうか、さらには一次創作と二次創作の分離も、判断はケースバイケースであって、その判断は容易とは言い難いものも多い。もし一次創作者がギャーギャー騒ぐのならそれなりに酷いケースなんだろうから、じゃあ裁判して白黒付けてやろうじゃないか、でもそうでないなら放っておこう、というのが現状の著作権法のスタンスだ。

大胆に考えれば、二次創作を行わせるためのプロトコルは、現状の著作権法の曖昧さの中に、ある程度インプリメントされているとしてもよいだろう。フェアユースってのだって、曖昧さ故に成り立ってるようなもんだ。

何が言いたいのかというと、「二次創作」=「違法」という認識は誤解だということです。「二次創作」とされる作品は、「違法」な作品を真部分集合として含む、くらいに考えた方が良い。そしてそのボーダーの曖昧さ、グレーっぷりは、フェアユースなどの制度を入れても、完全なホワイトにはならんのです。著作権法は曖昧なんです。

(1049)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2012-04-23 12:42:49

ノースリーブセーラー服記憶術(夏コミ直前のお知らせ)

偽広告・ノースリセーラー記憶術

夏コミ新刊『Little Moon Night Vol.4』の偽広告ページ。かわいい子がノースリーブセーラー服を着れば頭が良くなるのです。ネーム・彩色・仕上げ:俺、原画・ペン挿れ:lincoでお送りしております。

全PhotoShopファイルを収録したデータディスクを少量用意してます。後、バックナンバーは大体そろってます。今回でVol.4ですが、別に続きものではありません。

(37)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2008-08-16 23:28:34

夏コミは3日目 東ヨ-38b

女の子に見える男の子のためのファッションガイド本、と称したショタワキ本になりました。まあなんて狭そうな市場なのかしら。

かわいくなれ、オトコノコ (Little Moon Night Vol.4)
図1. Little Moon Night Vol.4 表紙
かわいい男の子のための通学ファッションガイド(Little Moon Night Vol.4 8~9ページ)
図2. Little Moon Night Vol.4 8~9ページ

編集に気合を入れてのでかなり通販誌っぽい誌面になってます。ニッセ●とかセ●ールみたいな。

(54)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2008-08-03 12:42:03

拡大縮小でそれなりに見える簡単アニメの理論と実践

マクロスFrontier第17話のOPは、一人で描けそうな簡単なアニメでもここまで楽しく出来るのだという素晴らしい見本だと思う。

まだご覧になってない方は、多分“macross frontier 17”などのキーワードでyoutubeを検索すると見られると思うのだけどそれは大声で言わないでおいて、まあ、がんばって見て聞いてください。

俺がこのOPでとても関心したのは、「拡大・縮小」や「回転・左右反転」などの単純な画像処理の手法を使って、見事に楽しいアニメーションにしているところだ。ちゃんとランカや携帯クン(緑の生き物)が踊っているように見える。

気になったので早速コマ毎に画像をキャプチャして、動きを確認してみた。ランカが踊っている繰り返し部分では、大体、以下のように元のSDキャラを拡大・縮小する動きのループになっている。

  1. 横100%×縦100%(=原寸), 5フレーム
  2. 横100%×縦100.1~100.2%, 1フレーム
  3. 横102%×縦98.5%, 1フレーム
  4. 横100%×縦98%, 1フレーム
  5. 横100%×縦99%, 1フレーム

これでちゃんと踊っているように見える! これはすごいぜ! プロがやると、FlashやGIFアニメみたいな素材と単純な拡大・縮小でも、ここまでそれっぽくなるんだなぁ。

多分コツは、1番目で5フレーム分「タメ」ることと、横に少し広がる3番目の部分(ここら辺で少しモーションブラーがかかってるようにも見える)だと思う。この5フレーム「タメ」るっていう緩急の付け方が、俺のような素人にはなかなか難しいところだ。

というわけで、早速MIAUのオフィシャルキャラクターみゃうたんのSDを描いて、同じ手法でふにふに躍らせてみた。

ダンシングみゃうたん

うむ、とてもみゃうみゃうである。

1枚元絵があれば後は単純な計算で出来る動きだから、ゲームなどには使えそうだなぁ。っていうか、既に色々使われているんだろうかな。

(128)

著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2008-09-01 12:01:04


<TOP>

[ Copyright 1996-2023 Mishiki Sakana. Some Rights Reserved. ]