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アジ文

青少年有害社会環境対策基本法という悪法が不気味に漂っている。こういう法案を持ち出す愚かな人間共、20世紀の社会学か、せめて歴史を学んでくれ。ある概念を「悪」として封じても意味が無い。何故なら、その禁じられている「悪」の概念も、記号の1つとして欲望を誘導するからだ。だから、あんたらの大儀名分は達成されない。以下は衒学的電波文だ。心して読んでくれ。

例えば。第二次大戦後のドイツでは、ナチズムがいかによろしくないものであるかを徹底的に教育し、ナチズム=悪だと叩き込んだ。しかし、そのナチに共感し「カッコイイ」と感じる若者は少なからずいた。いつの間にか、ネオナチなんてのもできちゃったりする。さて。もし、この若者達に「ナチズム」という概念そのものを教えなかったとしたらどうなっていただろう? ナチズムをカッコイイと思った若者達が、ナチズムの“思想そのもの”を再発明することはあまり容易ではない。どんなものであれ、ゼロから思想体形を組み上げるのは重労働だ。彼等は、既存のナチズムの思想をなぞっただけであって、選民思想を作り上げたわけではないのである。つまり、教育した人間がナチズムを善悪どちらで説明したかというのは問題ではないのである。問題は、そういう考え方を紹介したこと自体である。ナチズムが悪だという教育をしてたつもりだったが、「あ、こういう考え方があるんだ」と、若者達が思いもよらなかった考え方を提供しちゃった、と(これを「欲望の誘導」と呼ぶ)。

社会に欲望のモデルを与えなければ、思想や文化は今のように雑多にはならないと思われる。例えば、もし“ロリ”とか“オタク”いう概念や様式がなかったら、今ココを読んでいるようなロリヲタの人達(含む俺)のほとんどは、漠然とした不満を抱きつつもそれなりに普通に生活したと思われる。「ロリってのがあるんだ」、「ヲタな生き方は捨て難いな」というように、記号に誘導される形で欲望は加速し肥大化し、その結果共同体が成立すると、欲望はより一層シャープな輪郭を持つようになる。欲情の対象は、むしろ記号そのものと言って好い。

欲望を誘導する記号(欲望のモデル)は、あちらこちらに転がっている。図書館で思想・哲学や歴史の本を紐解けば、暇つぶしに人を切り刻んだ例や、死体に欲情してる例や、自分を救世主だと思い込んでる例や、いろんなのが出てくる。で、話は戻るのだが、今までの話を総括すると、青少年有害社会環境対策基本法みたいな法律で思想を検閲したとしても、そういう欲望のモデルにチラリとでも青少年を触れさせたら「アウト」なのだよ、推進派のキチガイ議員共。つまり、あんたらの大儀名分を達成するためには、この世からあんたらの気に入らない全ての思想、文化、概念、情報、理論を消し去り、なおかつちょっと頭のイイ人間がそれらの再発明を行わないよう、全員を愚鈍に貶めなければならない。確実に国が滅びる。

……まぁ何が言いたいかというと、要するに思想を法律で禁じるのは絶対に無理だということである。徹底的に焚書した上で、過去と断絶した温室で育てない限り。概念や考え方の存在を知ってしまったら、欲望は誘導されてしまうのだ。しかも、「欲望は遅滞によって養われる」という英語のことわざもある。ある概念を教えてしかしそれには一切触れさせないという状態が、最も人間の欲望を加速させるのだ。分かるか、糞議員。一言で言うと、この法律は“逆効果”以外の何モノでもない。人間ってのは記号に欲情するもんだ。

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著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-27 00:58:42


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