情報処理周辺に関するマスコミの報道は、不適切な用語の使用や稚拙な背景知識など、かなり非道いデキのものが多い。例えば、asahi.comの 4月8日の記事には「他人のホームページに侵入」といった素敵に頭の悪そうな表現がある。わずか 3 文節のフレーズなのにもうツッコミどころ満載である。他にも、「ウイルス」や「HP」や「基本ソフト」などのイタい表現は尽きないし、横書きが標準のウェブ用記事でさえ、「マイクロソフト・ウインドウズ」や「グーグル」や「ホットメール」など固有名詞を必ずカタカナに書き下すもんだから、読んでて背中がむずがゆい。
で、マスコミの情報リテラシが低いと批判したり、所詮マスコミなんてダメなんだとペシミスティックになるのも簡単なのだが、そんなことはやり尽くされてるから、いまさらどうでもいい。ちょっと冷静に考えるべきなのは、マスコミの報道というものは、どのジャンルにおいても、この程度の浅い理解とイタイタしい言葉の使い方しかしてないのではないかという点である。
私が一応プロだと言える範囲は、大まかに言ってヲタと情報処理なジャンルであって、ここら辺にはまあそれなりの知識と技術を持っている。となると、そういった事象を扱う記述については、マスコミの不正確さに気づくことができるし、より正確な表現にして欲しいとも思う。だが多くの専門外の人にとって、緻密すぎるターミノロジは、全体像を理解する上で妨げにしかならない。だから、多数の人間を相手にせざるを得ないマスメディアがある程度粗い説明になるのは、仕方のないことである。
となるとである。新聞やテレビで伝えられる、政治やら経済やらについてのニュースも、その道の専門家から見た場合は、多分かなりイタイタしい文章に仕上がっているのではないか、という推論が成りたちそうである。まあつまり、マスコミに載ってる内容って、そのジャンルのプロからみたら全部イタいんだろうね多分。もちろん、そういった記事を引っ張って騒いでるだけの素人の会話は、もっとイタいことになっているのだろう。所詮、素人が素人向けに書いたものを素人が読んで分かった気になっているのだから。
じゃあ、そういった素人のイタい活動は無意味なのかというと、もちろんそんなことはない。専門家は、素人の輪の中から生まれてくるのだから。それに、全員が全てのジャンルの専門家になるなんてことはムリなんだから。で、もしよく分からないことがあったのなら、素人は専門家の助言や解説を利用してその現象を読み解いて、多少なりともイタくない理解へ近づいていけばいい。まあだから、一応マスコミは可能な限りそうできるための道を用意しようとしている。専門家呼んで解説させたりしてるよね。
ただ、その専門家を選定しているのが超素人の視点だったりして、イタい解説をするイタい専門家を呼んでしまうことが少なくないなんて点が悩ましいわけで。つまり、リテラシを高めるというのは、学ぶべき人物を鑑定する嗅覚を高めるということなのかもねぇ。
著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:36