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ネットワークは何のため?

そもそも、昔の技術者はなんでコンピュータをつないでネットワークを作ろうなんて考えたんだろう。山形浩生はその理由を、コンピュータ単体じゃショボくて何もできなかったからだとアスキーPCの連載で述べている。その通りだ。周辺機器はおろか、ディスクもメモリもCPUも何もかも足りなかったから、リソースは可能な限り共有せざるを得なかった。では、なぜティム・リーはウェブ(ハイパーテキスト)を作ったのだろうか。これは本人の文章がウェブ上にある。要するに研究資料やコードなんかを上手く共有するために考えたわけだ。そもそもコンピュータネットワークとは、情報など資源の共有を目的とした存在なのだ。そして巨大なコンピュータネットワークであるインターネットも、情報を共有することを目的としている。ウェブもメールも情報の共有だ。情報はコピーされることで伝播していく。

さて、そのインターネットとは、全体を管理する組織が存在しない自律的なネットワークであるといわれる。ちょっと立ち止まって考えてみよう。それって、P2P 通信モデルのことじゃないですか。インターネットを構成している各ネットワークを結ぶルータは、全体を統括する存在がないわけだから、C/S(クライアント / サーバ)モデルではなく、P2P で動いている。RIP なんてまさにそうだ。P2P というのは別に新しく出てきた概念ではない。昔からインターネットは(広義での)P2P で動いているのだ。

情報資源の共有を目的としたインターネット。そしてインターネットは P2P モデルともともと相性がいい。だから、インターネット上の P2P システムで多量の著作物がやり取りされるというのは、(法的、倫理的な視点は抜きにして)システム的に考える限り、実は当たり前のことなのである。良い悪いに関わらず、インターネットというのはそういうベクトル(≒方向性)を持っているアーキテクチャ(≒仕組み)なんだ。そして、こういったベクトルを嫌がる側が、この構造を理解するよりも早く、インターネットはさっさと広まってしまった。はやっ。

もちろん、このベクトルは、現在の著作権法と禿しくコンフリクトする。現行の著作権法は、著作権者の権利を守るため情報の共有を制限する、ちょうどインターネットとは逆のベクトルを持っている。だから、情報ネットワーク社会と現行の著作権法とは、あまり相性がよろしくないのだ。これが現在の著作権法をめぐる問題点の 1 つだ。以上を鑑みるに、

「そろそろ匿名性を実現できるファイル共有ソフトが出てきて、現在の著作権に関する概念を変えざるを得なくなるはず。試しに自分でその流れを後押ししてみよう」

という Winny 開発者の発言の意図は、ネットワークがもたらす(あるいは既にもたらされていた)「当たり前」と、現行の著作権法とのギャップを何とか埋める、あるいは全てを押し切ってしまうことであったのではなかろうかと想像できる。上手に理念的にやればクリエイティブコモンズになり、強引に実装すれば Winny になるのだろう。

これを未必の故意による幇助と見るか見ないかは法律のプロがやることだから私には判断が付かないが、私に判断が付きそうなのは、こういった背景が司法判断をする法律のプロに伝わるかどうかという点だ。……うーん。微妙なところだな。簡単なことなんだけど。

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著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2006-09-26 17:58:31


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