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合理性はどこへ行った?

何だか、「UFOを信じる」とか発言した政府要職の人間がいるらしい。ここで、「UFO」を定義どおりに、「未確認飛行物体」のことだと考えると、「未確認な飛行物体の存在を信じる」ということになって全然意味を成さない。ということは彼の言いたいことは恐らく、「地球外の知的生命体による飛行物体が日々地球周辺をウロウロ飛んでいると信じている」ということなのだろう。バカも休み休み言って欲しいものだ。

このようにUFOをはじめとするオカルティズムを一刀両断に切って捨てると、その手の人たちからは、科学や論理を無批判に信奉している、と批判されるのだろう。だが俺は科学を信奉しているわけではない。科学の基本姿勢は、「疑う」だ。科学者は、既存の枠組みを疑い続け間違いを探し修正し続けるものだ。だから俺は、既存の学問を色々と疑っている。UFOをマンセーする人たちを俺が「バ~カ」と謗りたくなるのは、彼らの基本姿勢が「信じる」であるからだ。

宇宙人が存在しUFOが飛来していても、俺は一向に構わないし、むしろ世の科学者はそっちの方を期待していると思う。論理的な思考を常とする科学者という存在を、普通の人はUFO否定派の集まりだとみなしているのかもしれないが、それは勘違いだ。宇宙人を解剖したりUFOを分解したがるサイエンティストの方が圧倒的に多い。っていうかだな、むしろ全員そうかもしれん。

だが、UFOなり宇宙人なりというものの存在を科学的に認めるためには、あやふやな記憶や写真などの、判断材料とも言えない中途半端な記録をいくら積み重ねてもダメである。前提を疑い、論理展開を疑い、結論を疑いながら、疑問の余地がなくなるまで徹底的に調べ尽くせる存在を用意する必要がある。科学とは、そういう手続きを経ているものだからだ。「論理は本当に論理的なのか」というようなところまで疑ってきた科学者達は、「ある程度普遍的に通用する形で一定の見解を提示する手法」について磨きをかけ続けてきた。だから、多くの科学者があっさりUFOや宇宙人を認められるようそれらの存在を提示する方法は、ちゃんと用意されている。しかしながら、UFOを信じる人たちは、いつまでたってもその手続きが踏めない。

UFOマンセーな人たちが提示する「これは宇宙人の写真です」とか「UFOが着陸した跡です」とかいう怪しげな証拠には、山ほどの合理的な疑義が差し挟めてしまう。っていうかだな、存在するっていうならナマモノを持ってくりゃいいのだが、政府やらフリーメーソンやらの陰謀で毎度阻まれているのか、未だにナマモノは何も存在していない。であるからして、UFOという疑いの余地がでかすぎる存在を仮定しない方が、世界はスムーズに動く。

にも拘らず、こういうアホな事柄についてまじめに国会で問い合わせたり、あまつさえそれに答える人間が議員だったりするというのは、とてもおっそろしい。どう考えてもUFOより隣国のミサイルの方が怖いよ。合理的な脳味噌はどこにおいてきたのだろうか。

だがまあ、こういう合理的な思考が出来なそうな人たちも、国民が選んだ人である。人間は、常に合理的な思考を行うわけではない。ハイになってりゃ変な判断もするでしょう。ということは、合理的じゃない人も代表に(議員に)はなりえるだろう。だからまあ、こういう人が議員やっているってのは、良い現象だとは言わないけど、仕方が無い範囲だと思うんだよ。そういう人を減らしたいとは思うけどね。

それよりも俺の脳を悩ますのは、東京大学という日本で一番合理的な人達を集めて養成するはずの組織から、さらに合理的な人達だけが選りすぐられているハズの官庁という場所において、合理的な判断を下すための手続きが、全く行われていないことだ。まあ何のことかと言うと、これのことだ。

ダウンロード違法化は「やむを得ない」、文化庁著作権課が見解示す

川瀬氏は「客観的に見ても、違法着うたサイトやファイル交換ソフトで、適法配信を凌駕するような複製が行なわれていることは事実」と指摘。これらの複製行為がなければ、ユーザーの購買につながるかどうかは定かではないとしながらも、権利者に対価を支払わない“フリーライド”の典型であると述べ、「総合的に判断すれば、30条改正はやむを得ない」との考えを示した

「適法配信を凌駕するような複製」というのが、どこで、どれくらいの数、どれくらいの期間に渡って、どれくらいの質で、行われているのかとか、ツッコミたいところは他にもあるが、何よりも度し難いのは、「これらの複製行為がなければ、ユーザーの購買につながるかどうかは定かではない」にも拘らず、「やむを得ない」という結論に飛びついているところだ。これは全く科学的でない。合理的でない。

「やむを得ない」、つまり、ダウンロード違法化が適切だと根拠付ける定量的な調査・研究はあるのか? 「違法流通被害額」というのは、把握された流通数に単純に価格をかけただけのものだから、ユーザの購買ということを考えたら、数字としては無意味だ。以前、「のまネコ問題で考える二次創作の創造性」という記事を書いた時にも述べたけれど、適法かどうか怪しいコピーによってパブリシティが上がり、クリエイターもウホウホになるというケースは、『日本ブレイク工業』や、『涼宮ハルヒの憂鬱』など色々な例がある通り、決して特異点ではないのである。また、違法化することによって、5年先・10年先のコンテンツ市場がどう変わっていくのか、という視点もない。例えば、情報通信産業が萎縮することによるマイナス面を計量するためのモデル化も行われていない。

つまり、この文化庁の主張は、合理的に主張を展開する時の手続き、科学の手続きというものを全く踏んでいない、一方的で身勝手な暴論なのである。こういう非合理的な主張を、一般人の代表として選ばれる政治家ではなく、選りすぐりのエリートであるはずの官僚が行ってしまうということは、心底恐ろしい。だから文化庁の判断は、そういう意味でも批判しておかねばならない。直接面識がある人を名指しでここまで悪く言うのも初めてだが、まあ仕方ないよね川瀬さん。

って思ったんだが、例の「UFO信じます」発言の官房長官も通産省の出自じゃないか。オイ、日本の官僚しっかりしろ。

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著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2007-12-20 03:43:19


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