まだこれも噂でありウラは取れてない情報だが、高市早苗議員は連休明けに法案を国会提出するつもりだという。あのオバサン、本気だぜ。余り時間も無いので、正統的に論理で攻めていくだけではなく色々と搦め手を考える必要があるだろう。
たくさん頂戴したウェブ拍手など(ありがとう!)でも、「一体どういう経緯なんだ?」とか「何でこんなのが出てきてるの?」とか「いきなり無茶な!」といった意見が結構あったので、この法案の経緯と彼女の背後を、ものすごく大雑把にだが、記してみることにする。
そもそもこの法案は、『青少年有害社会環境対策基本法案』(Wikipedia)の亡霊である。やや昔のことなので、今騒いでいる青少年ネット規制法案が直撃するであろう10代の人たちなんかは、この法案の存在を知らないかもしれない。この法案は、「青少年の健全な育成を阻害する社会環境から青少年を保護する」という名目で、テレビ、ラジオ、書籍、ネットその他、メディアを問わず「有害」とされるものを規制することを目指したものだ。
この法案が出てきた時、テレビや新聞、書籍などといったメディアを扱っている団体、例えば日本民間放送連盟や日本書籍出版協会が、猛烈な反対をした。民放連は、表現の自由を侵害すると大上段に構えたし、書籍出版協会も、検閲だとして強い調子で非難している。他にも、日本新聞協会、映倫管理委員会、日本雑誌協会、マスコミ倫理懇談会などなど、有力なメディア団体はこぞって反発した。2ちゃんねるでも、延々と法案反対のコピペが貼られ続けた。
結局この法案は、2度国会提出を試み、2度とも葬られた。だから今回の青少年ネット規制法案は、3度目の正直というわけだ。そして今回は、民放連や書籍出版協会などといった、強いロビーイングを行える主体がないインターネットのみを狙い打ちにしてきている。テレビや新聞などの既存の大手メディアにとって、インターネットは目の上のたんこぶだ。今回、インターネットという“なにやら俗悪っぽいもの”のために、テレビなどのメディアが反対の狼煙を上げてくれる可能性は、無いと考えるのが妥当であろう。
さらにイヤな情報がある。高市早苗議員は、新聞の「特殊指定」の廃止に反対してきた人だ。新聞の特殊指定というのは、まあつまり、日本全国どこでも同じ値段で新聞が買えるようにするための規制の1つだ(Wikipedia)。書籍や音楽CD、新聞などの再販制度・特殊指定の見直しは、時々取り上げられるものの、業界団体の猛烈な反発にあって、毎度毎度潰されてきた。そして、高市早苗議員は、特殊指定が無くなったら新聞の価格が上がるとか、国民の知る権利が侵害されるなどと称して、この価格維持制度を守る先鋒として奮闘してきた過去を持っている。だから、新聞業界にとっては涙が出るほどありがたい存在なのである(参考:livedoorニュース)。さて、そんなありがたい高市議員様が推し進めていらっしゃる青少年ネット規制法案に、新聞や、その新聞と深く結びついているテレビキー局が、積極的な反対を表明する理由は、どこかにあるだろうか? そう、既存のマスメディアの多くは、この法案の問題点を、多分黙殺するだろうね(ただ俺は、既存のマスメディアにも、志のある記者さんが大勢いることを知っている。彼らの良心に期待しているよ)。
まあつまりだ。この法案を推進している人たちは、長い年月をかけて外堀を埋めて来ているし、本気でこの法案を成立させるつもりなんだね。ということは、反対する側もちゃんと本気になる必要がある、ってことだ。現在のウェブメディアも、もう決して小さな勢力ではないしね。できるだけのことをしてみようと思う。
今回は特に意図的に、Googleだけで調べ、Wikiepdiaの記事を参考にして文章を書いてみた。30分くらいでこれだけのことが調べられるインターネットって、すごいと思うよ。一応俺は結構長いこと先生業もやっているから、学生がどっかのサイトからのコピペでレポート課題を誤魔化そうとする様なんてのは、散々見てきている。でも、コピペで誤魔化せるようなレポートってのは、その課題の出し方にも問題があると俺は思っている。Wikipediaに載っているようなのは公知の情報なんだから、そんなもので誤魔化せるのは問題の方がおかしいわけで、そうした公知の情報を用いて新たに何がくみ上げられるかが、本当に問われるところになるだろう。公知の内容について無駄な手間隙をかけずに簡単にコピペができて、その上で新しい論理をくみ上げていくことができる世界って、俺はとても幸せな形だと思うね。18歳未満がそういうことすら満足にできない環境に押し込まれるのは、悲しいことだ。
著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2008-04-06 18:22:10