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オタクを取り囲むもの

青少年ネット規制法案に関連してすっごく大勢の人から賛同をいただき、とても心強く思っています。正直この法案絡みのウェブ拍手については、ブログの記事として返信できる上限の数を大幅に超えてしまっている感じなので、その辺はお許しください。

さて、色々なリアクションがある以上当然否定的な意見もあるわけで、それもありがたく消化してはいるのだけれど、その中でちょっとがっかりしているのが藤代氏の記事だ。ざっくり言えば、「アンタはオタクだの萌えだのといった属性を掲げながら法案反対の論理を組んでいるが、それは止めた方がいいよ」ってことだろう。

藤代氏は、警察系の研究会へ参加しているところなどを考慮するに、どちらかと言えばネット規制容認派というか、穏便派なのだろうと思う。だから、今回の俺のように大きく騒ぐことを決めた反対派の人間を批判するのは分かる。そこはどうでもいいんだ。

俺が気に入らないのはそのロジックと根拠だ。高市法案についての反対意見を「ナイーブでイノセンスな反対運動なのはロリ絵師だから」というようなロジックで批判してくる時、そこにはどうしようもない偏見が入っているんじゃなかろうか。

最近は街中でエアガン乱射するような公共の福祉に反しているDQNなオタクもいるそうだけれど、俺は納税しているし年金払ってるし遵法意識も高いつもりのオタクでありネットユーザーである。そして俺のみならず、社会的に全うであるよう不断の努力を払い、慎ましやかに生きているオタク達の方が圧倒的に多いのだ。

俺の描くものを嫌いだとかキモいなどと受け取る人がいるのは、嬉しさの対極ではあるが当然甘受する。「フィギュアなんてキモい」という意見も、言論の自由が保障される国だから、大変結構な意見の1つだと思う。でも、「『萌え』とか『オタク』っぽいものは法案反対の運動から抜け」という主張は、受け入れられない。

社会の中でひっそり生きてきたオタクが、オタクとして生きていくことを妨害されそうになった時、それも単に「今までと同じようにひっそり絵が描きたいなぁ」程度のしょっぼい立場を守りたいというモチベーションから、全然やりたくもない 政治的な努力を払わねばならないこと、そのために実名も顔も晒しているということ、それが俺の現在の状態だ。それは必然的で社会的で、嬉しく無いけど政治的で、でも極めて健全な民主主義国家での運動であって、そこにはケチをつけられる覚えも無ければ根拠も無い。第一このサイトは、俺が自分で金を払ってサーバを借りて、自分でCMSを組んで、個人で運用しているものだ。純粋に俺個人の見解を述べるものに過ぎない。

「オタクを見たら犯罪者と思え」、「オタクだから気持ち悪い」などというのは紛れも無い偏見であろう。そして、犯罪者ではないオタク達当事者が、そういう一般の偏見を振り払おうと努力することが、何故社会的に妥当な運動ではないと考えられるのか。大塚英志や岡田斗司夫から森川嘉一郎まで延々続いてきたそうした努力を嘲笑する根拠は一体何だろうか。

それは、そういう人達の価値観が、「オタク」なり「萌え」なりを気に入らないという、どうしようもない理由じゃないのかね? どうして、オタクが被害を蒙るだろう法案への反対運動から、オタク的なものを抜かなければならないのかね? 俺は別に「小学生にエログロマンガ読ませたい!」なんて主張をしているわけじゃないんだよ。どうして「『萌え』を社会的に妥当な文脈の中に位置づけようという努力があっても良い」などとは発想できないのだろう? もちろん、そのための手法として拙いという意見なら、ありがたく受け入れるけどさ。

そもそもこの高市早苗議員の法案については、一部のブログや新聞報道で簡単な概要だけ伝えられていたものの、詳細については誰も載せていなかった。高市法案の個別具体的な内容についてネット上で大騒ぎを始めたのは俺でありMIAUであったわけだ。だから大声を上げる必要があった。そして、大声で大勢に伝える以上、問題点は分かりやすく単純に整理し、そのための根拠も誰もが理解できるものにする必要がある。

そういう「分かりやすくするための整理」や、メディアへのコンタクトを積極的にやらなかった人が、後になってからその整理の様を「イノセント」やら「ナイーブ」などと批判するのは、言わば「後出しジャンケン」だろう。反対するなら反対するで、誰よりも早くこの法案のダメさをわっかりやすく伝えていれば良かったじゃないか。

児童ポルノ法の改正案にしても、青少年ネット規制法案にしても、あるいは、ダウンロード違法化問題にしたって、法を改正したり作ったりするための根拠には実態を伴わない漠然とした偏見、「ネットが悪い」、「オタクはキモい」などが用いられていると俺は感じる。今問われているものは、そういう偏見を掃っていこうというちょっとポジティブな覚悟だと思うんだな、俺は。

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著作者 : 未識 魚
最終更新日 : 2008-04-26 12:31:59


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