グレースケールで新規ファイルを作成し、ブラシツールで適当にアタリを取って大体の構図を決めます。描く前から魔法少女でツインテールで登校か下校時の姿というモチーフは決まってました。ネタが決まってると楽です。アオリ(対象を下から見上げている状態)にしたのはぱんつの都合上です。
アタリを元にどんどん新規レイヤーを作成ながら、ブラシで細部を下描きしていきます。この辺りの話は、下描きとペン入れについて の方に詳しく描いてあります。
仕上がりのイメージをつかむ為、大雑把な背景も描いてみます。ラインツールとブラシで適当に描いたので、この世のものとは思えないくらいパース(遠近法)がグチャグチャですが、ペン入れの時にちゃんと描くので下描きはこんなんでよいのです。また左足の部分がおかしいように見えたため、さらにレイヤーを切って上から描きつぶします。この時点で既にレイヤーが16枚ありますが、最近のマシンは CPU もメモリも腐るほどあるので気にもなりません。
この時点で、最終的な仕上がりのサイズを決定しておきましょう。今回は A4 350 dpiで出せるようにということで、長辺 4000 ピクセルほどの超巨大ファイルになりました。新規調整レイヤー作成でレベル補正を選び、ヒストグラムの下の 出力レベル(O) で、左側の白い△を右側の黒い▲に重ねます。こうすると画像が真っ白になりますので、レベル補正のダイアログを OK で閉じたら、調整レイヤーの不透明度を 90% 程度に下げましょう。うっすらと下の下描きが透けて見えます。この状態で、下描きをトレスするようにペン入れをしていきます。下描きとペン入れについて では白く塗りつぶしたレイヤーを使ってましたが、レベル補正を使う方がメモリ的に少し有利かもしれません。
またもやどんどんレイヤーを切って、どんどんペン入れを進めていきます。イメージ(I)→画像回転(E) から左右反転や上下反転、90度回転を使って、一番線が引きやすい位置に画像を持ってきましょう。右利きの人なら右上から左下へ引く線が、左利きの人なら左上から右下に引く線がもっともブレにくく安定しています。
あの世のものとも思えないほどいい加減なパースで下描きした背景のリファインをします。描き上がった人物などのレイヤーを隠して、パースの補助線用に新規レイヤーを作成します。人物がアオリですので、消失点はやや画面の下寄りになります。階段の辺りに消失点を決め、ラインツールで何本か適当に線を引いて見ると、如何にグチャグチャのパースだったかがよく分かります。
消失点から引っ張った線だけでは、階段などの人工物を上手く描くことができない、というか、どういう間隔で線を引いたらいいかわからないので、さらに補助線を作ることにします。適当な大きさ(例では1000×1000)で新規ファイルを作成します。ラインツールで直線を描いたら、目測で 1/8 くらいを選択ツールで選択し、編集(E) → パターン定義(D) します。
編集(E) → 塗りつぶし(L) かバケツツールで、パターンで塗りつぶすを選び、Ctrl-a でレイヤー全体を選択して塗りつぶします。この後、白地の透明化 を行えば、等間隔に引いた直線だけが得られます。
等間隔の直線を作成したレイヤーを、下描きの画像にドラッグ & ドロップしてコピーし、Ctrl-t で自由変形します。遠近法 を選び、消失点に沿うような平行四辺形へ変形させます。まだ何をしてるかよく分からない人も、もう少しすれば分かります。
直線を自由変形したら、適当な縦線を2本引き、その縦の直線と、変形した直線の一番外側の線との間に出来た四辺形の対角線を1本引きます。これで補助線の作成は終了です。
補助線のレイヤーの不透明度を 20% 程度に下げ、変形した直線と先ほど引いた対角線とのそれぞれの交点を通る平行な横線を、ラインツールで引いていきます。
補助線を画像右側にも反転コピーして貼り込んだら、横線をベースに垂直に縦線を引いていきます。階段らしくなってきました。
その他の縦線や消失点に向かう線や、ランプシェードを描き加えます
実は、1点透視で描いたパースは、人工的で遠近感に乏しくなることが多いのです。この絵の場合も、縦の線が垂線だとアオリの雰囲気が今一つです。パースを描く際に2点透視にすればよかったのですが、消失点が画面の中にないため作図も面倒くさくなります。なので、いったん1点透視で描いてから PhotoShop の自由変形ツールを利用することで、擬似的に2点透視にしてみます。
自由変形で2点透視化を行う前の図とアオリ感を比べてください。
これでとりあえず下描きとペン入れは終了です。総レイヤー数は 60 枚程度。まだほうきや珠やリボンを描いてませんが、その場で描けるものですので塗りながら描くことにします。また、この人物のパースの消失点はヘソの下のスカートの辺りなので、背景の消失点と少しずれてますが、人物や猫などのパーツの位置は仕上げの時に調整するので気にしません。
人物と背景の間にはこういう白で塗りつぶしたレイヤーを挿入しておきます。自動選択ツールで型抜きすれば簡単に作れます。
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人物、猫、背景など、パーツ毎に色塗りします。人物以外のレイヤーを全て不可視にして人物の主線だけを表示し、イメージ → 複製 で人物の主線を複製します。色を塗る際に主線が複数レイヤーに分かれてるメリットはあまりありませんから、統合レイヤーのみを複製(M) にチェックをいれておきます。
この新しく出来た画像に色を塗っていきます。主線は主線画像として別途保存しときましょう。色を塗るためには、グレースケールモードから RGB モードにしなければなりません。イメージ(I) → モード(M) → で RGBカラー(R) を選びます。
Ctrl-a(全てを選択)、Ctrl-j(選択範囲から新規画像を作成)し、ブレンドモードを 乗算 にしたら、背景 に移動して Ctrl-a、Delete(削除)を行い、主線の乗算化と 背景 の削除を行います。主線画像の白背景は、まだ透明化しません。色を塗っている途中に主線の小さなミスを発見することが多く、その際に乗算の方が簡単に修正できるからです。
背景 は、何も描かずに残しておいた方が色の確認などで助かることが多いので、私はいつも真っ白や真っ黒などの単純ベタにして残してあります。
新規レイヤーを通常モードで作成します。選択ツールを利用して主線から肌の選択範囲を作り、塗りつぶしていきます。
塗りつぶしはバケツツールではなく、Alt - Delete(描画色で塗りつぶし) や Ctrl - Del(背景色で塗りつぶし) を使うのが便利です。
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新規レイヤーを乗算で作成し、先ほどの肌レイヤーとグループ化します。グループ化すれば、塗りがはみ出すという心配はなくなります。d キーを押して描画色を黒にして、肌の陰(shade)の部分を見定めながら黒く塗っていきます。PhotoShop を利用したセル風、ギャルゲー風の塗りの場合は、実際には塗るというよりも「色を置く範囲を決める( = マスクを作る)」という作業だと思ってください。
どうやって陰を塗ったらいいか分からない人は、この図形を眺めながら、「何故これが円柱に見えるのか」、「何故真中の辺りの急激に明るさが変わっている部分は凹んで見えるのか」、辺りを考えながら悩んでみましょう。光源に対する角度の変化が緩やかなところは太いエアブラシ、急激に角度が変わるところは細いエアブラシかブラシを使う、というのが基本です。急激に色が変わる(段差がハッキリしている)場合は、角がある場合、緩やかに色が変わる(段差がボケている)場合は、角がない場合です。
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ひたすら塗っていきます。小さい範囲で間違えた場合や気にいらない場合やは、消しゴムツールを使うのではなく、白で塗つぶすようにした方が素早く処理できます。描画色は、d キーを押すと常に黒に、dx とキーを押せば常に白になります。また、黒で塗っていると全体の様子が分かり難いので、レイヤーの不透明度を適宜上下させて確認するようにします。
黒で陰の部分を塗り終えたら、陰レイヤーのグループをいったん解除します。不透明度が 100% になっているのを確認したら全体を白で塗りつぶしし、背景を透明化 します。これで陰の色を置くエリアが完成です。繰り返しになりますが、PhotoShop でセル風、ギャルゲー風の彩色をする場合は、塗るというよりは、色を置くエリアを決める作業 なのです。
現在のレイヤーを白で塗りつぶす場合は、編集(E) → 塗りつぶし(L) で以下のように設定します。
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再び肌レイヤーをグループ化し、陰のレイヤーを適当な色で塗りつぶしします。この際、透明部分の保護のチェックを忘れるとレイヤー全面が塗りつぶされてしまいますから、要注意です。
新規レイヤーをスクリーンモードで作成し、今度は白のブラシかエアブラシでハイライト(明るいところ)を入れていきます。スクリーンは乗算の逆なので、間違えたら黒で塗りつぶせばよいのです。今度はレイヤーの背景を透明化する作業は不要です。
さらに照りを出すために、先ほどスクリーンモードで作成したハイライトのレイヤーをコピーし、覆い焼きモードにします。強烈なハイライトが付きますので、全体の様子を確認しながら、両レイヤー共不透明度を 10%~30% 程度に下げます。
過剰なハイライトと高すぎる彩度、これがギャル絵の醍醐味です。ピカ絵・ピカ塗り、大いに結構ではないでしょうか。肌を美しく見せるための技法だと開き直ってしまうべきです。
先ほど乗算で加えた陰(shade)レイヤーの他に、影(shadow)のレイヤーを加えます。影とは、光が遮られることで出来る、最も暗い部分です。髪の影ができる顔、頭の影ができる首、服と肌のスキ間、肌が何かと触れている場合はその触れている辺り、などに大体影ができています。乗算モードでもよいですが、通常モードで入れる方が立体感が付くかもしれません。これで肌は完成です。
瞳のベースとなる白目を肌の上に通常モードで置きます。
通常モードで、ベタあるいは軽いグラデーションを置きます。これが虹彩に当たります。
乗算モードか通常モードで陰の部分を入れます。記号的ですが、真中の縦長の部分は瞳孔です。それ以外のは陰に相当する部分です。
これは陰との段差を付けるため(ピカ感を出すため)のハイライトです。
乗算でさらに瞳孔に陰をつけます。この例では見やすくするために瞳孔の塗りレイヤーを隠してあります。
主線レイヤーの上にスクリーンレイヤーを作成し、主線の一部も白で飛ばしながらハイライトを入れます。これで瞳は完成です。上まぶたの下に薄い水色か灰色でさらに陰を入れると、よりそれらしくなります。
通常モードのレイヤーを作り、ベタまたは薄いグラデーションで髪のベースを塗ります。
肌の陰を付けるのと同じです。乗算モードのレイヤーに黒で塗ってから白い部分を透明化し、適当な色で塗りつぶします。
覆い焼きモードでレイヤーを作り、明るくしたい部分にうっすらと白のエアブラシを吹きます。
スクリーンモードでレイヤーを作り、ブラシやエアブラシで細かいハイライトを入れます。
その他の部分も、肌や髪と同様、ベースとなる部分を通常モードで設定し、そこに乗算やスクリーンや覆い焼きのレイヤーをグループ化して乗せることで彩色していきます。現在のレイヤー数は30枚程度。
この例でのソックスは、ベタ色の透明度を下げて肌の塗りを透かすことで表現しています。
今まで主線を乗算で乗せていましたが、白地の透明化を行って、主線を通常モードで乗せるようにします。
主線に色をつけると全体の印象が柔らかくなります。基本的な色つけのルールとしては、
これで人物は完成です。多数のレイヤーを切る最大のメリットは、いったん塗った後での色の変更が非常に容易であるというところでしょう。
人物の時と同じように、下描きの背景部分だけを表示して画像を複製し、RGB モードにします。人物の塗りの時は、主線の間違いを塗りの段階で修正し易いようにと、主線の白地の透明化を後回しにしましたが、この背景の主線はさっさと 白地の透明化 をしてしまいます。新規レイヤーを通常モードで作成し、壁や階段などの同一の素材で構成されている部分を塗りつぶします。
壁や階段の色を置く陰の部分に、それぞれ新規レイヤーを作成して色を置いていきます。
画面左の階段が作る影や、画面左上の梁の周辺、ランプシェードの周りなどに、それぞれ新規レイヤーを作成して影色を置きます。壁や階段の塗りは実はこれで大体終了です。
ベタ塗りとグラデーションだけでは全然質感がありません。手描き風の塗り斑を加えて、より絵らしくしてみましょう。新規レイヤーを作成し、ブラシで水色や赤、緑などを適当に塗ります。こういった塗り斑には、「常にこうやれ」という公式はありません。もし水彩絵の具でこの絵を塗るならどうするか、を考えながら塗るのがよいでしょう
水彩らしい塗りは、普通のエアブラシで出来ないこともありませんが、カスタムブラシを使用する方が楽でしょう。私は、まるたあ氏 の水彩ブラシを利用しています。各種解像度用の水彩風のブラシが準備されていて便利です。
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陰や影も表示すると、少しそれらしくなりました。
全体の色を統一するために、オレンジのグラデーションを薄く乗せて色調を統一します。
ランプシェードや下のソケットの部分を塗ります。ガラスなど、反対側を透かせたい時は、少し不透明度を下げるとお手軽です。
新規レイヤーを作成し、空色のグラデーションを流し込みます。
写真から雲を作成 のように雲を作成し、さらにエアブラシなどでイメージどおりになるよう細かく修正します。
樹の葉っぱ模様のスクリーントーンを張り込みます。左側の方がぶっちり切れてますが、最終的には人物で隠れるので問題ありません。
この葉っぱ模様のデータは、道原かつみ さんが作成され使用権フリーで配布されているものです。他にも有用な素材を多数ご提供下さっており、何度も助けられました。
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葉っぱ模様でも、薄ピンクに塗りつぶしちまえばさくらに見えます。さらに少し陰を入れて質感を出します。この程度の小さな範囲なら、陰用の新規レイヤーを作らずにそのまま塗ってしまってもいいでしょう。人物で隠れることが分かってる部分の陰は、ものすごく適当です。
人物の時と同様に主線の色を変え、壁の線やランプシェードの作る影を加えて、背景の塗りはこれで完成です。
猫の塗りも人物と同じです。特筆することはありません。
PhotoShop を離れ、Adobe Illustratorで魔方陣を作ります。こういった図形を PhotoShop だけで作るのはちょっと大変です。適材適所ということで、Illustrator 上で正三角形と○、ルーン文字を組み合わせ、それらしく見えるようでっち上げます。ちなみにルーン文字の部分にはどうでもいいことが書いてあります。
ことぶきつかさ氏風の頭飾りなどにも使えそうな珠です。まず選択範囲ツールを円形選択モードにして、円の選択範囲を作り、編集(E) → 境界線を描く を使って円の主線を描きます。
主線の下に新規レイヤーを作成し、適当な色で塗りつぶし、ベースの塗りを作ります。
ベースの上に新規レイヤーを作成してグループ化し、適当な陰色を置きます。
さらに新規レイヤーを覆い焼きモードで作成してグループ化し、ハイライトを入れます。輝いてる感じが簡単に出せます。
ベースの下に新規レイヤーを作成し、珠そのものが作る影を入れます。さらに、ベースの塗りと影の不透明度を適宜下げることで、珠の透明感を出します。また、ちょっと気になったので、主線の色を部分的に明るくしてみました。これで完成です。
別々に描いた人と猫はそれぞれレイヤーを統合し、背景を描いたファイルの上にドラッグして合成します。
ファイル(F) → 配置(L) で先ほど Illustrator で作成した魔方陣の .AI ファイルを選んで配置したら、 自由変形 の遠近法で変形させて遠近感に適合させます。
魔方陣のレイヤーをコピーして覆い焼きカラーにし、ぼかし(放射状)フィルタをかけてやると、魔方陣が輝いているように見えます。納得行かない部分は、エアブラシツールなどで多少白と黒を吹いて修正します。
ぼかし(放射状) フィルタはかなり重いので、処理が高速なドラフトで何度か試して仕上がりを確認してから、標準か高品質でかけましょう。ただ、ドラフトのザラザラした仕上がりもそれはそれで味なので、意図して利用するのもいいかもしれません。
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人物などの位置も決まったところで、ほうきやリボンを描き足します。こういう柔軟な処理ができるのが PhotoShop の素晴らしいところです。背景や人物のあるファイルで大体のアタリをとります。こういう行ったり来たりするような順番で描くメリットは、仕上げの時に「このリボンがもう少し右側にあったらずっと好い構図になるのに!」などと悩むことがなくなる点です。
大体のアタリを取ったら、アタリのレイヤーを別のファイルに持っていき、人物の下描きやペン入れ色塗りの過程と同じようにして仕上げます。リボンの下の方は、人物で隠れることが分かってるので、切れてます。
先ほどの珠や、ほうき・リボンのレイヤーを合成します。
人や猫や珠の影を入れます。その際、影のレイヤーを背景用の色補正グラデーションの下に持っていった方が色の統一が容易なので、レイヤーの順番を入れ替えました。
さくら吹雪の花びらや紙ふぶきなども、初めの下描きで描いてしまうより後から加えた方が、構図的に楽になると思います。これも主線を描いてから別レイヤーに色を塗っていきます。真っ白のまま取っておいた背景レイヤーに適当な色(この場合灰色)などを入れると、白中心の花びらが見やすくなって処理しやすいかもしれません。
ちょっとわかりにくいですが、左上から差し込んでくる光の筋を、覆い焼きレイヤーで描き足します。
魔方陣などの光や、小さな光の粒などを描き足して、全体を明るくします。
左側の壁の影を、人物の右手にかけてやります。猫にも影はかかってるのですが、これをやると却って嘘臭くなったので、猫には白いままでいってもらいます。また、人物のレイヤーにレイヤーマスクを作成し、髪の毛の部分の背景を薄ら透かすようにしてみました。
背景の壁や階段部分の色が薄かったので、壁や階段の部分を選択して、調整レイヤーでレベル補正をかけます。
お疲れ様です。